強弱で奏でる人生交響曲
音楽の世界ではどの楽器で演奏するにせよ必ずといってよいほど強弱のアクセントがあります。
強弱といった変化があることで音楽がより豊かな響きの層をもち、人々の心へ訴える力も増すのかもしれません。
そうでなければ、その調べはどれだけ単調で深みのないものになってしまうことか。
ここ、安曇野ではつい先日迎えたばかりだった里山を薄紅色に染めていた春から、すでに萌黄色に目を潤す新緑の季節へと移り変わりつつあります。
北アルプスの山並みには、まだ山頂にしっかりと雪を残していながら平野には春と初夏を織り交ぜたような色彩があふれる。
こうした景観に毎日、ため息をついてしまうほど心を動かされます。
皆さんのお住いの地域でも同じだと思いますが、モノトーンに彩られた長い冬の世界から明るい色彩が少しづつ表れる季節へと歩みを進めるに従い、心が動く瞬間が多かったことと思います。
ただ街中を歩くだけで目につく色彩の変化はもちろん、通勤の途中の見慣れた光景、日常生活のふとした瞬間など。
ささやかな日常の中にちょっとした季節の変化を見つけては心を躍らせる・・。
なんでもないような草花や風景に改めて感動し、それを胸に刻みながら心に新たに芽生えた目標や夢を彩る希望の源とされていることでしょう。
ささいな変化に心を動かすことができるのは、厳しい時期をも経験しているからこそ。
なんでもないような当たり前の日常を改めて感謝とともに見直し、新たな創造の源として歩み続けられるわけです。
これがずっと春の景観のままでしたら、あれだけ感動していたものごとも、きっとつまらなく単調に感じられてしまうことでしょう。
人生には決して楽々と進める時期だけではなく、しっかりと自分自身と向き合う厳しさを伴う時期もあります。
日本の四季のように、私たちも喜びあふれるとき、苦しみや辛さを踏ん張って乗り越えなくてはならないときとを、誰一人もれることなく経験しています。
けれども、それらがうまく織り交ぜられているからこそ、人生はドラマチックに変化し続け、時に思いもしないような素晴らしい展開を生み出したりもするのでしょう。
その過程で私たちも止まることなく成長し続けることができるわけです。
季節のささやかな変化に胸躍らせるように、さまざまなことを経験し、さまざまな感情を味わい尽くし、一瞬一瞬の心の変化を楽しむ。
人生はやはり音楽や季節と同じく、強弱あってこその味わい深さだと思います。
今がどんなタイミングであれ、皆さんが一生懸命生きている今この瞬間が、一つ残らず皆さんの人生により深みを増す経験となっていることを忘れずに大切にしていけたらいいですね。
人生という何楽章もから成り立つ壮大な楽曲のなかで皆さんはどんな調べを奏でていきたいのでしょうね。